2001-3

               一木こどもクリニック便り 西暦2001年3月(通算51号)

さくらさくら弥生の空は…花見に心誘われる季節も、黄砂や花粉が舞う日は、花粉症やダスト過敏症の方には辛いものです。おぼろ月夜、春かすみ、南寄りの風の日にはいつも私は頭痛がします。気圧の変化と体調には深い関係があります。皆様は如何でしょうか?

 こどもの病気の診かたと看かた
         (46)こころの悩みへの対応

こころの悩み相談に、私はどのように対応しているのか、簡単な方法を解説します。以下に述べることは10歳以上の方への「個人面接」を想定した技法だと考えてください。

基本的に、ステップ1、ステップ2の2段階で考えます。

それぞれを3段階に分けると、全体で6段階となり、5W1Hの法則に合致します。
ステップ1はWhat、who、howのWWH、ステップ2はwhen、why、whichのWWW。

ステップ1  急性期の対応=まず混乱をしずめる。
        この段階では「なぜ?」と問わない。


@ 何が問題になっているのか(what) =からまり合う問題の交通整理をする。
A その問題を悩んでいるのは誰か(who) =困っているのは誰かを明らかにする。
B どのように問題を解決したいのか(how)=とりあえず可能な解決策(出口)を見出す。

ステップ2   長期的な展望
         =現実社会(家族、学校、職場)への適応能力を身につける


C 何時からその問題が発生したのか(when) =時間を過去にたどる(これまでの人生)。
Dなぜその問題は発生したのか(why) =意識の奥底に眠る抑圧された傷との対面。
E可能性の中での現実的選択(which)=未来の時間を思い描く(これからの人生)。

人生を聴くということ

相談に来られる方(来談者、クライエント)が、カウンセリングに対して抱いている期待感は、カウンセリングが始まってしばらく経つと、ほとんどの場合に、「何かが違う」という違和感へと変っていくことになります。

来談者の多くが、スカッとした解決法の提示や、「性格を変えたいのだが…」と希望されますが、5W1Hへの解答作業を行うべきなのは問題を抱えている当の本人あるいはご家族なのであって、相談を受ける私たちが解答をだすわけではありません。

問題の在り処(ありか)に相談者自身が「気付く」こと、そのための援助提供が私たちの仕事なのです。戦っているのはあなた自身。心理士や私は伴走者でしかありえません。 ひたすら語りつづける作業の中から、いつか解答に気付いてくださることを願っています。 一緒に走る者がいれば、多くの人が自分のレースを完走できるようになるでしょう。

友人同士で「カウンセリングごっこ」が実現できれば、それがもっとも良い方法です。

 こどもの病気の診かたと看かた
         (47)今冬のインフルエンザ

今年は例年よりインフルエンザの流行が遅れ、当院では3月に入ってから急に増えてきました。インフルエンザウイルスは鼻やノドの粘膜に吸着した後に増殖を始めます。粘膜にウイルスがくっついた時点で、IgA抗体という皮膚や粘膜の表面で戦う抗体が登場します。一方、侵入したウイルスを迎撃するミサイルはIgG抗体という、戦闘能力の高い抗体です。
   
現在、インフルエンザワクチンとして使用されている不活化ワクチン(皮下注射)を接種した場合には、IgG抗体だけが作られます。ところが、天然のインフルエンザに罹ったら、IgG抗体だけでなくIgA抗体も作られます。IgA抗体が十分にあれば、インフルエンザウイルスは鼻やノドの粘膜でブロックされて体内に侵入することができません。

予防接種を受けていても罹る人が結構いるのは、不活化ワクチンではIgG抗体しか作られず、したがってウイルスがノドの粘膜から体内に侵入することを防ぐことはできないからです。弱いウイルスを鼻からスプレーで注入する生ワクチンでは天然モノと同じく、IgGのほかに、IgA抗体もできるので発病を防げるそうです。期待しましょう。でも未発売   

尿路結石についてー私のプチ闘病

2月と3月は、大変に困難な季節でありました。昨年秋に偶然、血尿で気づいた腎結石が、バレンタインの日から徐々に尿管を下り始め、3月22日夕刻に体外に排石されるまで、激痛か鈍痛か、どちらかが必ず襲うという日々を過ごさざるを得なかったからです。

石狩川をさかのぼる鮭でもなく、筑後川からフィリピン海溝へ下るウナギでもなく、オホーツクの海底で目覚め、東京湾を目指すゴジラのように、それはズシーン、ズシーンと私の尿管をゆっくり降りてきました。リストのハンガリー狂詩曲1番がBGMに鳴り響いています。ハシカ、プール熱、インフルエンザの高熱にも、嘔吐下痢症や食中毒の腹痛・嘔吐・下痢にも、椎間板ヘルニアの痛みにも耐えてきた私ですが、今回は比較にならない痛み。石飼い病院に入院時は意識もうろうとなっておりました。

腹部エコーではキラっとダイヤモンドのように光って見えたので、「バカラ」のクリスタルか、「ホヤ」のクリスタルくらいにきれいな石であろうと期待しました。この痛みに耐えれば宝石が手に入ると確信しておりましたが、それが産まれてきた瞬間に、「ナンヤ?」と思いました。宝石どころか、黒くて、かじりかけの金平糖のようにギザギザして、何ともみにくい石でありました。ああ期待してバカラしかった、わてはあホヤ…。石がでなくて泣いたのは昔、今は石しかでなかったことを泣いております…なんてことはありません。

デパートの宝石売場にあるどんな立派な宝石よりも、私のみにくい石は貴重で大切なものです。いつも他者の痛みを忘れないようにと、それは神様が与えてくれたいましめなのかも知れません。欲望を押さえるために、いつも石で自分のからだを打っていたと伝えられる聖ヒエロニムスのように、次の石がすでに準備されているのかも知れません(恐ろしい)。

早朝から順番とりに並ばれたお父さんお母さん、またお祖父ちゃん、お祖母ちゃん方に、突然の休診や診療中断を告げざるを得なかったことを心からお詫びいたしたいと思います。 もっと自分の健康管理に注意して休診騒ぎを起さないように努めますのでご寛容ください。

発行:一木こどもクリニック 2001-3-26:宗像市大字東郷394番地(文責:一木貞徳)電話0940-36-0880

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