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第2章-11:設計図が語る謎、その1


設計士のA氏は、どのような建築を脳裏に思い描いていたのか?
当院の欠陥が次々と明らかになってきた現在に至るまで、A氏からは、私に対してまったく何の説明もありません。とくに外壁を剥ぎ取って壁の内部を検証してからは、一切音信不通になった状態です。
本来、A氏がみずから明らかにするべき現状への説明は、数回に及ぶ、A氏以外の建築専門家によってなされた調査報告書によって推測するしかありません。

A氏が残した資料で最重要なものは、設計図書です。
これは、A3版見開き59頁の図面ですが、最初の図面の日付は平成7年8月21日となっています。
ここには、求積図(図面番号A8)(
図1)とその一部のトレース(図2)を示します。

一目瞭然ですが、待合室外壁は完全な4分の1の円弧で縁取られており、玄関、外来患者用トイレ、事務受付、廊下などが4分の1円(AOBで囲まれた部分)に配置されています。円の中心(O)は、診察室と点滴室の隔壁上に位置します。
円の半径(R=AO=BO)は、9100mm (9.1メートル)です。

半径Rの円の円周は、円周率(π)=3.14として、2πRですから、
4分の1円であるABの外周は、14.290mmとなります。

2πR x (90°÷ 360°) = 2 x 3.14 x 9100 x 1/4 ≒ 14.290mm










このうち開口部として、玄関(2.275mm)と幅650mmの窓が3ケ所 あります〔窓(1)、窓(2)、窓(3)〕。開口部以外の部分、すなわち耐力壁部分の寸法は以下のとおりです。

窓と窓の間隔は1.600mm
窓(1)と玄関の間隔は2.990mm
トイレ外壁2.275mm

幅910mm、厚さ9mmの構造用合板で、これらの耐力壁を造作しようとすれば、

窓と窓の間の部分     1.600 ÷ 910 = 1.76 枚
窓(1)と玄関の間の部分  2.990 ÷ 910 = 3.29 枚
トイレ外壁          2.275 ÷ 910 = 2.5  枚

これで明らかなように、910mmの合板の幅では、ちょうど割り切れません。
910mmの半分の455mm板、あるいはその半分であればどうでしょうか?

窓と窓の間の部分     1.600 ÷ 455 = 3.52 枚
窓(1)と玄関の間の部分  2.990 ÷ 455 = 6.57 枚
トイレ外壁          2.275 ÷ 455 = 5   枚

きれいに割り切れるのは、トイレ外壁のみです。

しかし、耐力壁の幅が2分の1になれば、壁倍率も2分の1になります。
それよりも重要なことは、厚さ9mmという剛性の高い構造用合板で、このような自然な曲面を作ることは困難であるということです。半径(R=9.100mm)を合板で構成すればちょうどパネル10枚となります。しかし、4分の1の円周を合板で構成しようとすれば、仮に開口部を消して、すべて耐力壁として考えても、

14.290 ÷ 910 = 15.7 枚となります。








実際には、開口部があるため、現状の曲面を構造用合板で構成しようとすれば、出っ張りだらけの不自然な多面体しか実現できません。構造用合板の幅をどんどん狭いものにしていけば可能でしょうが、2x4工法では、910mm以下の幅の合板は認定されていません。

ところが、厚さ3.5mm(2x4仕様)の厚紙であるサーモプライ(○○建材株式会社輸入販売品)では、構造用合板に比べて弾力性に富んでいるため、かなり自然な曲面を構成することが可能となります。もっともそれで、規定の幅の問題を解消できたわけではありません。サーモプライの幅も910mmだからです。


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