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第2章-3:「他人任せの甘えを絶ち、先頭に立ってたたかうことを決意」した!

平成9年7月中旬のある日、友人の紹介で、一級建築士のE氏がクリニックを訪ねてこられました。それまで、E氏とは一面識もありませんでした。誰に相談して良いのかわからず、食事ものどを通らず、毎日眠れないで悩んでいた私の健康を心配してくれた友人からの依頼で、E氏はまったくの善意で来訪して来られたのです。
建物内外を案内し、設計図書に目を通してもらいました。

E氏 「…ひどいですね、何ですかこれは…。まだ2年も経っていないのでしょう?」
私  「1年半ですね。小さな漏水は竣工1ヶ月から始まりましたけど。軒の黒ズミ、シミなどがハッキリしてきたのは今年からです。屋内漏水もひどくなっています。」
E氏 「設計監理をされた方は何と言われているのですか?」
私  「それが、看板取付のことでもめてから、顔を出さないようになっているので、こちらからは、施工を請け負ったC建設を介してしか連絡できないのですよ。C建設が連絡してくれているはずですが、今のところ、音沙汰ありませんね。」
E氏 「設計図と現況建物がまったく違っていますので、早まったコメントは、まだできませんが確認申請の図面と、完工届の図面を受け取っていませんか?」
私  「そんな図面は記憶にないのですが、必要なら土木事務所に行って閲覧してきます。ところで、C建設から、現在の雨漏り、軒の腐食などの補修に必要な費用として、以下のような見積がでていますが、次々に異常が出てくるので、本当にそれだけで済むのか心配なのです。先生の方で、少し調査をしていただけないでしょうか?」
E氏 「正直に申しまして、他の設計士さんが設計監理した建築について、調査したり、コメントするのは気が重いんですね。でもこれはとにかく何とかしないといけないと思います。ご期待に添えるかどうか、まあ私にできる範囲のことでよければ。」






私  「こんな調査を喜んで引き受けてくださる方はいないだろうとは思っています。でも他に心あたりもないものですから…。是非お願いします。」

私はワラにもすがる思いでした。毎日、建物が変容していくのを見て、心は冬の窓外のように暗い気持ちでした。医療だけを考えて人生を送りたいと思ってスタートしたのですが、最初からつまずいたことにようやく気づきつつありました。

そんな毎日の中で、E氏の来訪は、冬枯れの木立の間から射しこむ柔らかい光のように、温かで優しいぬくもりを感じさせるできごとでした。
E氏のように親身に話しを聞いてくれる「専門家」に出会えたのは久しぶりだったのです。

平成9年8月22日、E氏は、氏の友人の工務店主(一級建築士)や、建築写真家(E氏の先輩)を同道して再度来訪され、写真や各部の採寸、設計図書などの調査をして帰られました。それは非公式ではありましたが、A4版7頁の意見書「一木こどもクリニック建設とその後について」として、私あてに提出されました。
上記報告書の中で、E氏は、緊急対応が求められるものとして、次のように述べています。

「後に詳しく述べるが、現在建物は竣工1年半のわずかな期間に、かなり傷みが進んでいる。全て軒先からの漏水が原因で、軒先の雨仕舞の根本的な改善が急がれなければならない。建物は、輸入規格材と合板で構造体を成立させる2x4工法となっているため、軸在来の工法よりも、湿気には十分対応しなければならない。

責任の所在を明らかにすることは重要だが、建物の維持管理の観点から、結果待ちでは建物全体のダメージを広げかねない。上記の工法に湿気がからめば、カビ・ダニ・やがては白蟻だ。何よりも先に早急なる処置を講じる必要がある。」







この文章を読んで、私が感じたのは、私のような素人にもスッと納得・理解できるものだ、ということでした。E氏なら力になってくれるかも知れない、そう感じたのです。

さて、C建設が自社で規定した、瑕疵保証期間の2年間が終了するのもあとわずかに迫った平成9年9月、私はE氏を紹介していただいた友人に再び依頼して、法律専門家(弁護士)に相談することにしました。
9月30日昼、弁護士さんが当院を訪ねてこられました。

弁護士さんからは、その時も、また後日も、「本気で争うのであれば、他人任せにせず、あなたが自分で資料や証拠を収集し、勉強してやりなさい。内容証明郵便も、練習と思って、ご自分で書いてみてください。」というふうに言われました。
私は、それまで、裁判というものは、弁護士さんの腕次第で如何ようにでもなる、と安易に考えていました。設計氏のA氏が私に「如何ようにでもなります。」と言明したように。
証拠収集も、調査をしてくださる方への依頼も工法の検討も、すべて弁護士さんが代行してくれて、私は電話さえ待っていれば良い、そういうイメージを抱いていたのです。

しかし、これはあなた自身の闘いなのだと言われて、私は自分の甘えを絶ちました。
この建物から次々と発せられる、悲鳴のような症状が、いったいいかなる原因に基づいているのかを自分は明らかにしなければならない、それは自分自身の義務なのだ、そうはっきりと気づいたのです。

正直なところ、医学を学んだだけの私にとって、建築学などはまったく不案内ですから、しばらくは途方に暮れました。やがて、ある共通点、医学も建築学もどちらも科学である、医学には、まだメンタルな部分、心の問題などファジイな部分が多いけれど、建築学は応用科学である工学の中でも、もっとも確かで、具体的(concrete)なものであるはずだ。
それならば、自分にも理解できるはずではないだろうか?そう思い到りました。








私は小児医療を日常の職業としておりますが、日々の仕事の中でもっとも大きなエネルギーを費やしているのは、専門的な内容を、どうしたら素人の方に理解していただけるのかということです。建築学でも、もし素人の自分が理解できるように簡明にレクチャーしていただける方がおられたら、こんどは私が、それを一般用語に置き換えて、さらに多くの一般の方々にレクチャーしたい、そう思ったのです。

そういう目で考えなおした時に、この事例は、当事者である私自身にとっては、とても辛くて泣きたくなるような現実ではあるけれども、建築業界という大きな存在を相手に、一消費者がどのようにたたかったのか、その記録を残すことによって、同じ立場にある人々に、大きな勇気を与えられるのではないか?と思い直すことができました。

ただ告発するだけではなく、どうしたら日本の建築を、消費者が一生の財産を安心して賭けて購入できるものと変えうるのか議論したい。建築や、不動産や、法律の専門家任せではなく、中学校で学んだ技術の知識でも理解できるような、素人でもわかるような議論をして、建築業界に非を認めさせたい、そう決心したのです。

後日、振り返ってみれば、設計士のA氏、地場ゼネコンのC建設株式会社、2x4建材施工販売の(株)○●ちょう、屋根板金施工販売の(株)○○○○本店などは、互いに究極の目的を知らずに協力し、神の見えない手で操られるように、日本の建築業界にとって、きわめて都合の悪い、決して人前にさらしたくない、恥ずべきモデルハウスを作ってしまったのだと、末永く語り伝えられることになるでしょう。この建物が日本の建築業界の姿勢を大きく転換させるきっかけとなる、エポックメーキングな建築物になるかも知れないのです。
Q&A 1:2X4って・・?

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