第三者鑑定による鑑定評価書は平成12年3月24日付で、福岡地方裁判所に提出され、平成12年12月14日、鑑定人の1人T氏に対する鑑定人訊問が行われたのですが、そのときに驚くべき事態が明るみにでました。
原告代理人 「2x4工法についての基準として、建設省告示第56号枠組壁工法技術基準告示(昭和57年1月18日)と、住宅金融公庫枠組壁工法住宅工事共通仕様書というような基準があることはご存知ですか。」
T氏「何らかの基準はあるとは思いますが、具体的なものについては存じておりません。」
原告代理人 「…? これらの基準を証人ご自身が調べて確認されたことはありますか。」
T氏 「ありません。」
原告代理人 「これらの基準がどういう目的で設定されているかということもご存知ない?」
T氏 「そうですね。」
私はT氏の一連の答弁に絶句しました。
一級建築士の肩書きを名乗り、あるいは不動産鑑定士として、個人の財産権の侵害評価に直接関わる、鑑定と称する作業がこのような者たちによって堂々となされたのです。
上記鑑定人訊問におけるT氏の答弁を知った読者の方々は、この第三者鑑定がいったいどのようなものであったのかを知りたいと思われるでしょう。それは次章以下で詳細に検討していきます。
欠陥住宅被害者が受ける被害とは、不法な建築家や工務店によって生じた、欠陥建物に起因する直接的な被害ばかりではありません。
被害を矮小化し、隠蔽し、裁判の中で本質的な議論から裁判官の目をどんどん遠ざけ、逆に、枝葉末節で難解な、専門用語を散りばめた議論に裁判官や弁護士を引きずりこみ、もって争点をうやむやにしてしまうために、第三者鑑定という名のもとに提出される、きわめて恣意的な鑑定、裁判所の中でのみ通用すればこと足れりと考えるデタラメ鑑定によって、被害者は間接的にも二重の被害を受けることになります。
そのことを、HP読者の方々に是非理解していただきたいのです。
つづく
|