前回に見たように、設計図書記載の構造用合板(壁倍率3.0〜3.5)の半分以下しか強度のない、代替品サーモプライ(壁倍率1.5)が施主に無断で使用された現状施工の強度を、耐力材ではない木製縦胴縁まで助っ人に加えることで、強引に1.5倍にアップした鑑定評価書ですが、それだけではまだ弱いと考えたらしく、補強金物を使用した場合の耐力をダウンさせる工夫も加えられていました。
(以下鑑定評価書より)
S-65の金物の場合、釘はZN65で釘が3本まで有効に
施工可能
壁倍率 = (以下計算式は省略) = 1.476 (1)
(金物不使用で)、釘はZN40で釘が2本有効に打設されている場合
壁倍率 = (以下計算式は省略) = 1.796 (2)
以上より(2)の結果数値 1.796 > (1)の結果数値1.476
であることからS-65の金物の補強方法より(金物不使用で、縦胴縁を455mm幅で使用した)(2)の施工方法の方が強度があるといえる。(鑑定評価書別添資料-2 「補強金物による接合部の構造計算」より)
上記(2)の計算式の壁倍率は、前回ご紹介したトリックにより、1.5倍にアップされています。
つまり現状の壁倍率は、正しくは
1.796 x 2/3 = 1.197 (2´)
さらに、上記(1)の計算式に使用されている有効打設釘数ですが、写真のように、S-65金物(長径650mm、短径30mm、厚さ2mm)には、実際には全部で15本もの釘が有効に施工可能で、サーモプライと土台を緊結する下部だけでも、5本の釘が有効に施工可能なのです。
注:写真の金物は下方が土台と緊結する側で、5本の釘穴が確認できる。
他にも上部に4本、中間に2本ずつ3組の釘穴(計6本)が千鳥にうがたれており、合計15本の釘が有効に土台および下枠に施工可能。なお、当然ながらこれらの釘穴すべてに釘を打つ。
したがって、(1)式は正確には次のようにあらためるべきです。
S-65の金物の場合、釘はZN65で、土台との緊結には釘が5本有効に施工可能
壁倍率 = (以下計算式は省略) = 2.46 (1´)
注:1.476 x 5/3 = 2.46
すなわち、仮に設計図書がサーモプライ使用になっていた場合でも、鑑定評価書は、正しくは次のように記述されるべきです。
以上より(2´)の結果数値 1.197< (1´)の結果数値2.46であることから(1´)のS-65補強金物使用の施工方法が、(2´)の金物不使用で釘だけによる施工方法より、強度があるといえる。
鑑定人はS-65金物の現物を見ずに計算をしたのでしょうか?
知りながら知らないふりをして、ウソをついたのでしょうか?
3-6へつづく
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