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第1章-3:知らぬは施主ばかり。

建築確認申請提出の時に福岡県土木事務所に提出された設計図書と、完成した建物とが、まさか全然別物になっていようとは、私は最初の「建物現況調査報告書(E設計士)」を見るまでは知りませんでした。

それなのに、完工後の届け出内容が、申請時の届け出書類とまったく同一のものであったとは、夢にも思っていませんでした。
さらにこれも後で調査の時に判明したことですが、氏の設計図面には詳細施工図というものがまったくなく、実際に図面を描いたのは、2x4担当の下請けである(株)●○ちょうという会社の担当者O氏だったのです。

ゼネコンが受注した建物を、半額以下で下請け孫請けに丸投げするというような話は見聞きしますが、設計図の丸投げというのは私には初耳でした。

A氏は設計責任も監理責任も建築家としての倫理感も良心もすべてどこかに丸投げしてしまったのでしょうか?

さて、現場作業が半ばまで進捗した頃、金属屋根瓦の軒先部分のデザインをどのようにするのか、ということがA氏の新しい懸案として浮上してきたようです。

A氏「実は、雨樋をつけたくないのです。デザイン上、すこしひらめいたことがあって、どうしても雨樋は邪魔ですから。」
私 「雨樋がなかったら、雨の始末はどうやってするのですか?」










A氏「それはまったく心配いりません。雨が漏るようでは話にならないわけですから。心配されなくても雨漏りは起こりません。雨樋のない建築も神社などに結構見られるのですよ。雨は直接軒端の地面に落ちるようにしますが、そこで雨音が発生するのを防ぐために、玉砂利を敷きつめます。」

私 「理屈上、雨樋がなくても雨漏りしない家というのは理解できるのですが、でもやっぱり不安ですけど。設計図では雨樋がちゃんとあるわけでしょう?本当に雨樋なしで大丈夫なのでしょうか?」
A氏「大丈夫です。まかせてください。問題なく仕上げますから。」

実際には、A氏が軒先金物の形状についてのデザインをまとめることは困難だったらしく、設計変更のために要した日時は約3週間もかかり、おかげで工事はその分だけどんどん遅れることになりました。

ちなみに金属屋根についての施工管理は(株)○●○●本店(福岡市)でした。実際の図面はA氏がフリーハンドで描いた図面を基に同社の社員が作成したものです。こんな屋根では漏水が防げないことは、今の私には一目瞭然に判断できますが、その頃にはA氏の言のとおり、問題のない屋根に仕上がるものと信じておりました。

さて、屋根の次にA氏の関心は外壁に移行したのです。設計図では耐水タイルをモルタル貼りして通常のタイル貼りどおりにきちんと目地をモルタルで埋めていくはずでしたが、A氏は、目地を埋めることなく直接ウレタンでコーティングしたいと言い出したのです。しかもカラータイルの上から白色ウレタンを。



なぜわざわざそんなことをするのか?







私の頭の中には、初めから、古代ローマの石積みの教会というイメージがありますから、茶系のタイルのままで良いのです。メーカーの仕様書どおりにきちんと施工してもらえればそれで済むはずです。そういうイメージでA氏に設計を依頼し、A氏もそれを了解して契約したはずなのに、途中からA氏はどんどん自分のイメージに変更していったのです。

私は数回にわたって、A氏に「やはり白はイメージに合わないから止めて欲しいと思います。なぜ茶色タイルのままではいけないのですか?」と訴えました。

ところがA氏は、
「先生には未だ見えていないと思いますが、自分にははっきりと見えているのです。信じて下さい。必ず後で感謝していただけるはずです。私はそれを確信しているからお願いしているのです。きっと後で喜んでもらえることになりますから。」とくり返すばかり。

そしてA氏は、竣工時はおろか、開院披露宴(平成8年1月21日)まで、白塗りの本心を明かすことはありませんでした。何とA氏は私が依頼した古代ローマの石積みの教会というイメージを勝手に変更して、「ギリシャのパルテノン神殿」に意匠替えしていたのです。

それを披露宴に集まってくださった100名余の招待客の前でスライドを使って説明しましたから、当日参会した方々は皆さんご存知のはずです。私が参会者に配った「施主謝辞」には、古代ローマの石積みの教会という言葉がそのままでてきます。

知らぬは施主ばかりなり。

A氏は私だけではなく、参会者にアッと思わせたかったのだろうと、今思います。









しかし、どうしてこんな変な話になってしまったのでしょうか?その秘密を解くカギは、「賞ねらい」にあると私は推測しています。A氏と会うようになって2回目、A氏がこう切り出したのです。

A氏「実は、大手ゼネコンの鹿○建設が若手設計者を対象にした賞を設けているのですよ。」
私 「そうですか。鹿○建設というのは、出版部門もありますし、メセナ活動もなかなか 活発ですね。先生もそういう賞をいただけると素晴らしいことですね。」

A氏「いや、狙えるものなら、狙ってみようかなと思っていますが。」
私 「今回の建物でですか?こういう小さい診療所でも、狙えるのですか?」

A氏「規模は関係ないです。ただコンセプトがありきたりの建物ではちょっとですね。」
私 「賞の対象になるなんて、施主としても嬉しいですね。」

A氏「他に北九州市からも、ある設計コンペに参加しないかと誘われているんですよ。」
私 「すごいですね。やはり一つ賞を取ると違いまね。」

A氏「もちろんその分、苦労も多いですけどね。」

Q&A 1:2X4って・・?

本物の壁です
【外壁写真】
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一息入れましょう!つづく