第4章-16:Ω氏による調査報告書 10

調査依頼項目5.
その他本件建物の現況について、調査人の感想又は見解を述べよ。
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報告書(つづき)

1)本報告書は24項目の瑕疵を指摘しているが、これら瑕疵の原因と工事関
係者との関連を考察すると以下の感想を持つ。

A:設計者

J)構造とデザインの齟齬
本件建物の構造は枠組壁工法であり、設計図書の外壁壁材は厚さ9mmの構造用合板である。一方、外壁には半径91cmの曲面があるが、厚さ9mmの構造用合板を半径91cmの曲面に貼り付けることは施工上困難である。そのため、壁材が厚さ3.5mmのサーモプライに変更されたのではないかと推定される。

曲面の外壁デザインと厚さ9mmの構造用合板を壁材とした枠組壁工法の構造には齟齬があると判断される。


K)雨仕舞詳細図の不足
本件建物は雨水による損傷が顕著である。また、棟包み板、雨押え包み板、軒先水切り、けらば水切り等の施工不良も顕著である。

本件建物は屋根勾配がゆるく、軒の出の無い箇所が多く、水切りの形状が複雑なため、屋根の雨仕舞は重要である。

しかし、設計図書には雨仕舞の詳細図がない。雨仕舞の詳細が設計図書に示されていないことも、雨水による損傷の発生原因になっていると判断される。


L)技術力の不足
本件建物の設計図書には、耐力壁直下の布基礎や土台が記載されていない。また、設計図書の矩形図は、軒先まわりの納まりやシーリングが不十分である。さらに、設計図書には屋根やサッシまわり等の詳細図がなく、枠組壁工法の軸組図は施工者が作成している。

これらの事項や上記@は、設計者の技術力不足を示している。

B:工事監理者

J)構造検査の不備
本件建物は構造部分に建築関係法令に違反する瑕疵がある。また、枠組壁工法には住宅金融公庫の共通仕様書を下回る瑕疵がある。さらに、基礎パッキンは標準仕様書を下回る瑕疵がある。

したがって、本件建物は工事監理者による構造検査が行われなかったことを示している。また、工事監理者の技術力不足による構造検査の不備の可能性もある。


K)設計図書に基づく検査の不備
工事監理者は設計図書に基づく施工が行われているかどうかを検査することが重要な職務である。

しかし、屋根・外壁異種接合部のシーリング未施工、屋根断熱材の設置位置不良、アスファルトルーフィングの施工不良等は、設計図書に基づく検査の不備を示している。


(HP作成者注:本件建物では、設計者と工事監理者は同一人物ですが、法理論上はそれぞれ別の法人あるいは個人であることを前提としているために、このような議論となります。現実問題としては、A氏は設計者として、また工事監理者として、提示された問いに対して説明責任を有するわけです。)


C:請負者

J)現場監督及び社内検査の不備
本件建物は設計図書を下回る瑕疵や施工不良による瑕疵が多数ある。これらの瑕疵は現場監督及び社内検査が不十分であったことを示している。

K)施工図の未作成
本件建物の設計図書は、矩形図が不充分であることや詳細図がないことから、請負者は工事に先立って、重要箇所の納まりは施工図を作成し、工事監理者の承認を受けることが望まれた。

本件建物の工事は、施工不良による多くの瑕疵から判断して、施工図を作成しないで下請まかせ、職人まかせの工事が行われたと推定される。

2)本件建物の瑕疵の特質の一つに、雨水による損傷と雨仕舞の施工不良があ
る。また、外壁と床下の限られた現地調査でも、端根太、端根太ころび止め、 
下枠等の構造部材の腐食を確認した。他の外壁や床下の構造部材についても
腐食が推定される。

 本報告書では、現地調査で確認した箇所についてのみ、腐食部材の補修費
用を算出したが、詳細調査を行えば、さらに構造部材の補修費用が発生する
と推定される。本件建物は枠組壁工法であるから、1階床まわりの構造補修は解体・復旧費用が相当高額になると推定される。
また、本件建物を現状のまま放置すると、雨水による構造部材の腐食が一層進む。建物の安全性や補修費用の経済性を考慮すれば、早急に事件を解決し、補修工事に着手することが望まれる。

オメガ氏の報告書に見られる、理路整然とした論理的構造が、欠陥建築裁判において多大のインパクトを与えてきた経緯がよく理解できることと思います。

これにて第4章終了です。
第5章において、A氏およびC建設現場監督たちの陳述内容を検討します。どういう展開になるでしょうか。