第4章-3:監理者と施工業者の談合

平成7年9月13日に、私はC建設株式会社と、総額8,000万円(内、3%消費税相当額2,330,097円を含む)の建築請負契約を、C建設の本社ビルで締結しました。社長の弟である専務と営業部長、工事部長、他数名が立会いました。

契約書に署名押印するときに、私は営業部長のT氏に、「本当にこの金額でこの工事を引き受けてくれるのですね」と確認しました。

T氏は「その通りです」と確約したのです。その場にA氏は不在でした。

このときに不在で、監理者としての署名押印をしなかったことを根拠に、後日、A氏は、私とC建設との建築請負契約を承認できないものとし、かつ監理者としてのA氏の責任自体を否認しようとするに至ります。

建築請負契約の内容は、A氏の設計図面とC社提出の精算見積額8,700万円(消費税別)の仕様にもとづく工事で、延床面積299.18平方メートル(ほぼ90坪)の診療所併用住宅の新館建築です。入札の監理はもちろんA氏が仕切りました。

契約書の第2条は、工事内容について、
「別紙、設計図書及び明細書(見積書)による」と明記されています。

ところで、裁判で、次の驚くべき事実、予想外の事実が明らかになりました。
平成7年9月2日に、C建設現場監督D氏(工事管理者)と、A氏(設計監理者)とが、A氏の事務所で会合し、8,700万円の精算見積書中の仕様を大幅に変更して、総額950万円分のコスト削減を画策していたのです。

すなわち、実質7,750万円の工事内容になるように仕様ダウンが計られたのでした。これに3%の消費税額2,325,000円を加えると、合計79,825,000円となり、契約額である8,000万円より、逆に175,000円低いコストとなります。

私とC建設とが、8,000万円の工事請負金額で、相互に内諾をした翌日の会合です。もちろん私は不在で、この事実についても本件裁判の中でC建設から資料が提出されるまでは全く知りませんでした。これより11日後に締結された、私とC建設との建築請負契約にA氏は欠席しています。

この重大な事実は何を意味するのでしょうか?

C建設は、私に恩を着せて、大幅なプライスダウンで請合う約束をしておきながら、その一方で、自社にはまったく不利益が発生しないよう、契約金額の8,000万円より安価な工事内容になるよう監理者のA氏と共謀していたのです。

A氏は本来彼がすべき業務内容からは完全に外れた業務を行ったのでした。
A氏の本来の業務とは、建築主である私の利益を最後まで守ることに他なりません。8,700万円の工事が仕様ダウンすることなく完全に遵守されるように、C建設の不正を見逃さないように監理すること、それこそを私はA氏に託し、そのために要求されるがままに、A氏に多額の設計監理料を支払って、建築士業務委託契約を締結したのですから。

仮に私とC建設との契約書が遵守されるべく、A氏が厳密な工事監理を行ったとしても、それでA氏は何か不利益を被るのでしょうか?この工事に関してC建設が万一赤字決算になったとしても、A氏の懐は何も影響を受けないのです。

一方、福岡S銀行もC建設も、当院の建築契約は、のどから手がでるほどに欲していたはずです。両者は何とかして工事の受注契約を得ようとしたのでした。

C建設は、精算見積額8,700万円の工事を8,000万円で請け負い、それを誠実に実行したとしても、どれほどの赤字になるのでしょうか?2x4建築で90坪の住宅が8,000万円なら、十分な利益が得られたはずではないでしょうか。

700万円のプライスダウンは、決して常識的に無理なものではなく、それがC建設に過重な負担を強要するものではない、したがって、工事にしわ寄せがくるほどのものではないだろう。
そう思ったからこそ、私はそのプライスダウンを違和感なく受け入れたのです。

以上を要約すると、A氏とC建設のコスト削減の談合により、
利益を得た者=契約違反、債務不履行   → C建設
不法行為を行った者           → A氏
不利益を被った者            → 建築主

となります。A氏の全面的な協力を得ることができたC建設は、内心非常にほくそ笑んだのではないでしょうか。
以上の事実がC建設現場監督のD氏の証言で明らかになったため、後日行われたA氏に対する証拠調べで、A氏もやむなくその事実を認めたのです。

ところが、なんとD氏もA氏も、コスト削減のことは建築主も了解済みであったと証言したのです!

それなら、その談合(9月2日)より後日(9月13日)に、私とC建設とで締結した前記の建築工事請負契約書に、なぜそのことを明記しなかったのでしょうか。
その事実が建築主、施工業者、設計監理士の共通認識であったと主張するのなら、なぜ、A氏は契約の場に立会しなかったのでしょうか?
D氏の発言もA氏の発言も、まず常識では考えられないことです。
C建設が上述の契約書をそのまま交わした唯一の理由は、8,700万円の仕様のものを8,000万円にディスカウントしてもらって大変ありがたい、と建築主は全面的に信じきっているようだ、とC建設が認識していたからに他なりません。

契約の場面で、事前にA氏とコスト調整を計ったなどとは、C建設の社員は専務以下、誰も一言も喋らず、何食わぬ態度を取り続けたのでした。

A氏が私とC建設との建築工事請負契約締結に立会しなかったのも、A氏の後ろめたい心情を考えれば当然うなずけます。9月2日の談合内容についても、A氏は私に一言も明らかにしなかったのですから。もし事前にその事実を知っていたら、私は、9月13日にC建設と契約など決してしなかったはずです。

さて、A氏やC建設が、裁判でこのような重大な事実を明らかにせざるを得なくなったのは如何なる理由によるものでしょうか。それは、かれらが依拠してきた第三者鑑定が論理的に否定されるような、あらたな鑑定が提出されたからに他なりません。それが、次章以下で述べるΩ氏による鑑定です。

お詫び:第一章で、A氏による設計図書は、私とC建設との契約締結時には未完成と記述しましたが誤りでした。私は設計図書について、製本された最終図面集(図書)を指すものと認識していたのですが、建築確認申請に必要な基本図面等、製本前のバラ図面も設計図書と考えて差し支えないというご指摘を受けました。A氏、D氏(現場監督)、その他法廷で証言した関係者全ても、契約時には、この意味での設計図書が存在していたとの共通認識ですので、ここに第一章の記述内容を訂正させていただきます。HP読者の皆様に誤りをお詫び申しあげます。

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