第4章-7:Ω氏による調査報告書 1

平成13年5月30日付で、当方代理人弁護士宛に、Ω氏の調査報告書が提出されました。また内容の一部をより正確な表現に改めた調査補充報告書が平成13年7月3日付で提出されました。

このHPでは両報告書を一括し、その概要をご紹介いたします。
内容はいずれも裁判で公開され、Ω氏本人への証人尋問を経たものですが、HPの都合上、原作者であるオメガ氏の表現意図を損なわないように注意しながら、実際の調査報告書とは記述の順序などを変更しております。

一連の報告書は、現在法廷で争っている多くの欠陥住宅被害者のみでなく、建築業界の方、とりわけ建築士の方々、また法曹関係者にとっても、欠陥住宅裁判における鑑定書がどのような構成を有するものであるかを知るのに、裨益するところ大であることと信じます。
なお図、写真はほとんど省略しました。


調査依頼項目1.【 I 】建築基準法及び建築関係法令に違反する瑕疵はどのようなものであるか。


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報告書

 建築基準法は平成12年6月2日に改正されているが、本件建物は平成7年8月28日に確認済証が交付されているため、本報告書は改正前の法令に基づいて記述する。
本件建物の構造は枠組壁工法である。枠組壁工法は建築基準法施行令(以下「令」という)第80条の2第1号に定める木造の「特殊の構造方法によるもの」に該当し、その技術基準は、建設省告示(以下「告示」という)第56号に定められている。本件建物の構造には、以下に示す違反がある。

1:耐力壁下部の土台及び布基礎の未設置
(令第80条の2第1号、告示第56号第3第1号、同第3第2号、同第5第11号)

告示第56号第3第1号は、「1階の耐力壁の下部には、土台を設けなければならない」と規定している。また、同第3第2号は「土台は、…一体の鉄筋コンクリート造又は無筋コンクリート造の布基礎に、…アンカーボルトで緊結しなければならない。」と規定している。

しかし、「図1 1、2階瑕疵図」に示す1階処置室と診療室の間仕切壁は、竣工図(軸組み図)によると耐力壁であるが、設計図書(基礎伏図、土台伏図)には、間仕切壁下部に土台及び布基礎が設置されておらず、耐力壁とみなせない。

また、告示第56号第5第11号は「耐力壁線に設ける開口部の幅は4m以下とし、かつ、その幅の合計は当該耐力壁線の長さの3/4(75%)以下としなければならない」と規定している。

上記1階処置室と診療室の間仕切壁が耐力壁でないとすると、竣工図(軸組み図)から判断して、Y1通りのX3〜X7通り間の耐力壁線の長さは8.79m、開口部幅の合計は6.703(1.731+1.421+3.551)mとなる。その場合、開口部幅の合計は耐力壁長さの76.26%(6.703m÷8.79mx100%)となり、告示第56号第5第11号に違反する。

したがって、本件建物の1階処置室と診療室の間仕切壁は、耐力壁でなければならず、令第80条の2第1号及び告示第56号第3第1号、同第3第2号に違反する瑕疵がある。当該間仕切壁直下は土台及び布基礎を設置して耐力壁にする補修が必要である。
(Ω氏の報告は、以下次回に続きます)

HP作者による補足
2x4工法(枠組壁工法)は建築基準法本体には言及されておらず、建築基準法施行令第80条の2第1号に下記のように規定されています(井上書院「建築関係法令集」、平成12年度版 148頁)。

第80条の2 …、建設大臣が、次の各号に掲げる建築物又は建築物の構造部分の構造方法に関し、安全上必要な技術的基準を定めた場合においては、それらの建築物又は建築物の構造部分は、その技術的基準に従った構造としなければならない。

一 木造、組積造、補強コンクリートブロック造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造又は無筋コンクリート造の建築物又は建築物の構造部分で、特殊の構造方法によるもの
(下線はHP作者による。2x4は本条で規定)

その技術的基準については下記のように規定されています(昭和57年建設省告示第五十六号 
枠組壁工法の構造方法に関する安全上必要な技術的基準)。

建築基準法施行令(昭和25年政令第三百三十八号。以下「令」という。)第八十条の二第一号の規定に基づき、構造耐力上主要な部分に枠組壁工法(木材で組まれた枠組に構造用合板その他これに類するものを打ち付けた床及び壁により建築物を建築する工法をいう。)を用いた建築物又は建築物の構造部分(以下「建築物等」という。)の構造方法に関する安全上必要な技術的基準を次のように定める。(以下省略)

Ω氏の報告書で明らかなように、現実の建物に、建設省告示で定められた
安全上必要な技術的基準に違反する瑕疵が認められれば、その瑕疵は建設省告示違反であるばかりでなく、その告示が依拠する建築基準法施行令(枠組壁工法の場合には、令第80条の2)への違反でもある、という結論になります。

さて、このΩ氏報告書(甲22号証)に対して、設計者A氏より、陳述書において奇妙な反論がなされました。
(以下、次回につづく)